小学生のテストの回答用紙。
一番上に「名前を書く欄」がありますよね。

実はこの名前の書き方に、
その子のテストへの気持ちが、そっと表れていることがあります。

急いで書いたような文字、
なんとなく投げやりな書き方。

そこから見えるのは、
「やる気がない」というよりも、
ちょっと疲れている心
早く終わらせたい気持ちなのかもしれません。

怠けているわけでも、
性格の問題でもありません。

学校、習い事、宿題…。
子どもたちは、思っている以上に毎日が忙しいのです。

だからここでは、
「ダメだよ」と注意するのではなく、
こんな視点を伝えています。

② ものを大切にすると、気持ちも整っていく

私は子どもたちに、こんな話をしています。

「鉛筆も、ノートも、消しゴムも
 毎日いっしょにがんばってくれているんだよ」

忙しいとき、疲れているとき、
つい道具を乱雑に置いてしまうことは誰にでもあります。

でも、
そっと置き直すだけで、
不思議と気持ちも静かになることがあります。

野球をしている子が道具を大切にするように、
ピアノを習っている子が楽器を大切にするように。

勉強する子どもたちにとって、
鉛筆やノートは大事な相棒です。

テストの名前欄も同じ。
私は子どもたちに、こう伝えています。

「名前はね、自分の顔みたいなものだよ」

うまく書けなくても大丈夫。
きれいじゃなくてもいい。

丁寧に書こうとすることが大切なんだよ、と。

③ 点数より先に、大事にしたいこと

勉強が苦手になってしまった子、
テストの結果に自信がなくなっている子に、

私はいきなりテキストを開いて
「やってみよう」とは言いません。

まず最初に伝えるのは、
「名前を丁寧に書こう!」ということ。

それだけで、
子どもたちは意外と楽しそうにやってくれます。

気持ちよく過ごすこと。
自分を大事に扱うこと。

それができるようになると、
不思議と集中力も、結果も、少しずつ変わっていきます。

これは「できていないからダメ」という話ではありません。
気持ちよく過ごしたほうが、楽だよねという提案です。

プリントも、かばんの中も同じです。

ぐちゃっとなっていても大丈夫。
気づいたときに、そっと整えてみる。

それだけで、
子どもたちの表情が変わる瞬間を、私は何度も見てきました。

④ おわりに

日本の子どもたちは、
人に優しく、がんばり屋で、思いやりがあります。

だからこそ、ときどき
自分自身を後回しにしてしまう姿にも出会います。

「ちゃんとしなきゃ」ではなく、
「大事にしていいんだよ」。

そんなメッセージを、
名前を書く一瞬や、鉛筆を置くしぐさから
そっと伝えていけたらいいなと思っています。

ほんの小さなことですが、
それが子どもたちの心を整え、
学ぶ力につながっていきます。